戦略日記
5個を同時に受け取れない #43
Apple社の広告戦略は洗練されており、ユーザーの心に刺さります。
古い話ですが、iMacを世にデビューさせる時の逸話です。スティーブ・ジョブズの片腕で世界的に有名なクリエイティブディレクターであるリー・クロウという人物がいました。
スティーブ・ジョブズが考えに考え抜き、30秒CMに5つのメッセージを盛り込むことを提案した際に、リー・クロウがメモ帳から1枚の紙の玉をスティーブ・ジョブズに投げました。これは難なくキャッチ。そのあと5枚の紙をちぎり、一斉にスティーブ・ジョブズに投げました。すると一つも受け取れず地面に落ちました。
リー・クロウは「これが悪い広告だよ」と言いました。
これは、あれもこれもたくさん同時にお客さんへ放っても受け取ることができないということです。
ランチェスター戦略でシェアが低い弱者の戦略は「一点集中主義」です。地域、客層、商品の3大戦略において、先ずは、自社の一番強い部分だけに経営資源を集中して市場を突破していくことです。キリで穴を開けるようなイメージです。そうすれば、局面では兵力的な優位を築くことができるので、差別化で武器効率も上げれば1位になることができます。突破できて、シェア1位を獲得したら、次の1位づくりに向けて横に拡げていきます。
大きな市場で小さなシェアより小さな市場で大きなシェアを獲得していくのです。
こうすれば、パレートの法則に基づき粗利益が高まっていきます。売上ではなく利益性を上げていくことが実力が高い社長といえます。自社の一番強いものは何か。競合に負けないものは何か。
手っ取り早く、現状分析できる方法があります。それは自社のホームページの内容です。
どのような内容が訴求されているでしょうか。どこの誰に対して訴求しているでしょうか。そして競合のホームページと見比べてみましょう。違いが明確になっているでしょうか。あれもこれもたくさん訴求したいとなれば、設定した客層に刺さることは不可能です。閲覧者から見たら何が何だかわからない。得意なものがわからないということになってしまいます。
「あれもできます。これもできます。何でもできます。」は「何も得意なことはありません。」と同じことになります。
「一つだけを選びなさい」と言われたら何を選択するか、じっくり考えてみてはどうでしょうか?