戦略日記
経営でやってはいけないDon’tsがある #224

経営活動において、やってはいけない「Don’ts」は数多く存在します。その中の一つに、売上至上主義の社長が陥りやすい罠である「安易な多角化」があります。
「売上!売上!」と、まるで呪文のように唱える社長。このように、売上は企業の成長を測る唯一の指標であり、粗利益の重要性は二の次で考えている社長が多く存在します。そんな社長が、新たな事業への参入を図ることは少なくありません。
「一つの事業がダメになった場合、他の事業で賄うためのリスク分散だ」もっともらしい名目を掲げ、社長は意気揚々と語ります。「新しい事業で売上を倍増させるぞ!」多角化や拡大は、周囲から華々しく賞賛されるので後に引けない状況に自らを追い込んでいきます。
しかし、そこには何の戦略もノウハウもない。市場調査も競合分析も、おざなりなものになってしまう。社長は、踏んではいけない地雷に気づかないのです。
必然的に、新規事業は既存の競合との同質化競争に陥ります。売上拡大主義は、安易な価格競争に走り、顧客の奪い合いという消耗戦を繰り広げ、売上はかろうじて維持できても、粗利益はみるみるうちに減少していきます。
「売上が上がっているのだから問題ない」根拠のない楽観主義を振りかざす社長。一方、現場では悲鳴が上がり、粗利益の減少は社員の給与やボーナスに影響を及ぼし始めます。士気は低下し、優秀な社員は次々と会社を去っていきます。
さらに、新規事業の立ち上げコストや、売上拡大に伴う固定費の増加が、徐々に会社の資金繰りを圧迫していきます。それでも社長は、まだ気づかず「売上さえあれば何とかなる」と、最後の最後まで希望的観測にすがってしまうのです。そして、やがて会社は死んでいきます。
経営において、売上は確かに重要な指標の一つです。しかし、売上はあくまで結果であり、企業の持続的な成長を支えるのは、粗利益という名の「筋肉」です。粗利益を軽視し、売上ばかりを追い求める経営は、砂上の楼閣に過ぎません。戦略なき新規事業参入や多角化は、本業でNo.1になっていない企業ではご法度となります。
他にも、企業のピーク時を示唆する兆候として、「新社屋の建設」や「派手な周年イベントの開催」といった事象が挙げられます。ピークに達すれば、後は衰退の一途を辿るのは自然の摂理です。
経営者は、売上という「華」に目を奪われることなく、粗利益という「実」をしっかりと見据え、地に足の着いた経営を行うべきです。「売上は虚像、利益は実像」。売上拡大ではなく、粗利益を最大化させる。この言葉を胸に刻み、真の経営者を目指していただきたいと痛感します。