戦略日記
戦略不在が招く犠牲 #214
ある会社の社員から「社内で生産性向上委員会というものがあるんです」とお話を聞く機会がありました。委員会の活動内容について聞きましたら、「生産性を上げるために、職場での改善について話し合っている」それも定時間外の残業として行っているとのことでした。
「生産性を上げよう!」は、多くの企業で叫ばれている言葉です。しかし、現場で汗水流して働く社員たちからは、「頑張っているのに成果が出ない…」「何をどうすればいいのかわからない…」
特に、川下と呼ばれる末端の現場業務では、いくら社員が努力しても、なかなか目に見える成果に繋がらないケースが多いように感じます。それは、上流にある戦略や指示が適切でないために、現場の努力が空回りしてしまっているからです。
川の流れをイメージしてみてください。上流で水が濁っていれば、どんなに川下で水を綺麗にしても意味がありません。川下の努力は、川上の戦略に左右されるのです。
経営活動も同じです。上流の戦略が曖昧だと川下の現場では無駄な作業や手戻りが発生しやすくなります。このような状態では、現場の社員がどんなに頑張っても、成果に繋がる可能性は低くなってしまいます。
経営者自身が、生産性のことをしっかり理解していないことも現場へ負担をかけている原因となっています。生産性とは、売上のことではなく、一人当たりの粗利益です。一人当たりの粗利益を高めるには大本の戦略で決まってしまうのです。
この戦略が無い状態や戦略が間違っていると、どれだけ社員さんたちが努力し奮闘しても一人当たりの粗利益を高める、すなわち生産性を高めることは至難の業となります。
生産性には指標があります。一人当たりの粗利益額で業種平均との比較を行います。これが明確な数値指標として社長の実力になります。この業種平均が1.5倍を超え、2倍、3倍と高めていく戦略をつくることが社長の仕事です。戦略なしで社員に新たな負担をかけ、生産性向上のテーマを社員に投げかけているようでは、社長失格と言っても過言ではありません。
経営の全ての原因は大本となる上流にあります。「上流が原因であり、下流は結果」となります。この本質を社長がわからないと、いつまでも社員の頑張りを不毛な努力として犠牲にしてしまいます。