戦略日記
正しい努力をする #208
「努力は必ず報われる」「練習は裏切らない」といった言葉をよく耳にしますが、辞書で「努力」を引くと、「目標実現のため、心身を労して努めること」とあります。つまり、努力はあくまで目標達成のための手段であり、それ自体が目的ではありません。
経営理念においても、「挑戦」や「チャレンジ」「幸せを実現する」等などが散見されます。大変、崇高であり良いフレーズでありますが、これらはあくまで企業の姿勢や価値観を示すもので、経営活動の目標であると勘違いしている場合もあるようです。いかに実現可能にするのかという戦略が不可欠になります。
目標を実現させる経営活動でいえば、戦略の設定、構築となります。この戦略がないと明確な目標がないのにひたすら努力をしていることになります。がむしゃらに頑張ることは尊いものです。しかし、残念ながら世の中には「間違った努力」が存在し、報われない頑張りをしてしまうことがあります。
「努力は必ず報われる」という言葉は、一見すると励みになる言葉ですが、裏を返せば、努力の方向性や質によっては報われない可能性もあるということを示唆しています。特に経営においては、この「間違った努力」が企業の成長を阻害し、社員のモチベーションを低下させる大きな要因になり得ます。
「挑戦」や「チャレンジ」は、ポジティブで良い言葉でありますが、これだけでは十分ではありません。これらの言葉は、あくまで企業の姿勢や価値観を表すものであり、具体的な目標や達成のための戦略がないままでは、単なる精神論に終わってしまいます。
例えば、闇雲に新規事業に挑戦したり、流行りのビジネスモデルに飛びついたりしても、それが自社の強みや競合との力関係、市場ニーズに合致していなければ成功する可能性は低くなります。また、社員に「チャレンジ精神を持て」と鼓舞するだけでは、具体的な行動指針を示せないため、社員は戸惑い、モチベーションを失ってしまうかもしれません。
「努力は必ず報われる」という言葉は、正しい努力をした場合にのみ当てはまります。経営においては、明確な戦略に基づいた目標に対して「正しい努力」をすることが、企業の成長と社員の幸福を実現するための鍵となります。正しい努力とは、正しい戦略に向けた努力です。社長が先頭になって全社一丸で間違った努力をしてはいけません。
社長は、企業の進むべき道を明確に示し、社員と共に「正しい努力」を重ねていく必要があります。「挑戦」や「チャレンジ」という言葉に踊らされることなく、常に本質を見据え、戦略的な思考で経営を進めることが、真に報われる努力へとつながるのではないでしょうか。