戦略日記
社員は社長を映す鏡 #202
「子は親を映す鏡」という諺があります。これは、子供の言動や性格は親の育て方や影響を強く反映しているという意味です。
子供は、親の行動や価値観を自然と観察し、模倣して育ちます。したがって、子供の振る舞いを見れば、その親がどのような人物であるか、どのような教育方針を持っているかを推測することができます。この諺は、親にとって自らの言動が子供に与える影響の大きさを再認識させ、責任感を持つように促す意味合いがあります。
子供の良い面だけでなく、悪い面も親の影響を受けている可能性があることを自覚し、子供の良い手本となるように努めるべきだという教訓を含んでいます。
この教訓は、「社員は社長を映す鏡」として、特に従業員数が少ない中小企業の経営者に置き換えることができます。中小企業では、社長の影響力がより直接的に社員に伝わりやすいからです。
私自身、社長に就任したばかりの頃は、社員教育こそが経営の最重要事項だと考えていました。社員のモチベーションを高め、全社一丸となることで業績が向上すると信じ、自己啓発研修などに次から次へと社員を派遣し多額の投資をしていました。しかし、残念ながら、社員教育は経営全体から見ると、私が思っていたほど重要度が高いわけではありませんでした。なぜなら、モチベーションは一過性であり持続性に欠けるからです。
ランチェスター戦略を学んでから、私はそのことに気づきました。社長が地域・客層・商品の3大戦略を適切に設定すれば、社員は市場で楽に戦うことができ、個々の能力に頼る経営から脱却できるのです。皮肉なことに、社長の戦略策定能力が低い会社ほど、社員教育に熱心になる傾向があります。過去の私は、正に社長自身の実力をないがしろにして社員の力に依存する典型でした。
「うちの社員は、何回同じことを言ってもわからない」「同じミスばかり繰り返す」などと愚痴をこぼす社長がいます。しかし、そもそも求人を行い、従業員を採用したのは社長自身です。社員の能力や行動は、社長が行ってきた経営の結果なのです。
従業員の能力に依存している社長は、ミスが起きると人を責めます。しかし、有能な社長は、戦略に基づいて誰もが一定の成果を出せる仕組みを作り、ミスが起きた場合は、人ではなく仕組みを改善します。
社員は社長を映す鏡です。社員の行動や態度は、社長のリーダーシップや経営方針を反映しています。社員の成長を望むなら、いの一番に社長自身が経営能力を高めて成長し、社員にとって魅力的な鏡となる必要があります。