戦略日記
経営の「どの部分」を話しているのか #200
経営者同士が集まり、課題に対して会議を行い、ディスカッションする機会は多くあります。しかし、会議でよく見られる問題の一つに、経営者同士で話が脱線してしまうケースが挙げられます。
課題と関係のない話題に話が逸れてしまったり、現在の議題から離れて特定の話題に熱中してしまうことがあります。一度脱線が始まると、会議がエンドレスになってしまうこともあります。特に、新しいアイデアを出し合う場面では、連想ゲームのように思考が広がり、議論が拡散してしまう傾向が見られます。
会議には必ず目的が必要です。課題解決のためのプロセスを検討する、具体的な行動計画を決定し承認を得る、プロジェクトの進捗状況を報告するなど、会議のゴールを明確にすることが重要です。
しかし、より本質的な問題として、経営者自身が「経営の流れや手順」を理解しているかどうかが挙げられます。経営には大きく8つの局面があり、この流れを理解することで、会議をより効率的に進めることができます。
1. 志や理念(精神的側面)
2. 経営の目的
3. 経営の目標(事業ドメイン)
4. 経営戦略(営業戦略や組織戦略など)
5. 経営の仕組みづくり(ブランディングなど)
6. 経営の作戦展開(マーケティングなど)
7. 戦術
8. 戦闘
これらは、1から8までが川の上流から下流に流れるように、順を追って構築・展開されなければなりません。これが、企業の運命を決定する経営の全体像です。
1から3の上流は、企業の理念やビジョンに基づく戦略を指します。戦略が明確でなければ、その後の行動は迷走し、目標達成が難しくなります。4から6の中流は、戦略を実現するための仕組みづくりを指します。ここでは、戦略をサポートする体系を構築します。7と8の下流は、実際の業務の実行と、その結果を踏まえた改善を指します。戦略に基づいた計画を戦術として実践する段階です。
戦略を欠いた経営者は、1と7、8の部分についてのみ話すことに終始しがちです。特に7と8は戦術なので、次々とアイデアが膨らみ、会議が収拾つかなくなる原因になるかもしれません。
経営の全体像を把握し、その流れを理解していないと各人が異なる視点で議論を進めてしまうので、今話し合っていることが経営のどの部分に該当するのかをしっかりと認識する必要があります。経営者が経営のどの要因がどのように成果に繋がるのかを事前によく理解してこそ、議論が本質的な内容へと深まります。