戦略日記
こびりついた売上主義の思考 #199
経営の勉強会などでは、企業にとって最も重要な数値指標として「売上」が語られることが多く、未だに価格を安くして販売数を増やす経営が重視されています。多くの経営者が売上増加を誇らしげに語る一方で、売上だけに焦点を当てた経営は、必ずしも企業の持続的な成長を保証するものではありません。
売上を伸ばすために価格競争に陥り、利益率が低下したり、品質が犠牲になったりするケースは少なくありません。
従来の経営では、売上を最大化することが目的とされ、売上増加が企業の成長と同一視される傾向がありました。しかし、ランチェスター戦略では、経営の目的を「1位主義」と明確に定義しています。これは、特定のカテゴリーで市場占有率を高め、1位になることで、パレートの法則に基づき利益を集中させる経営手法です。
例えば、巷の経営計画セミナーなどで、売上計画を作成する場合において過去の売上実績を睨みながら固定費に必要粗利益を足して、前年対比10%アップなど願望優先、自己都合型の売上計画になっています。これで目標を達成できるでしょうか。達成する方が不思議と言えます。何故なら、達成させる根拠がないからです。
一方、1位主義の経営では、売上よりも粗利益を重視します。なぜなら、粗利益こそが企業の血液とも言えるもので、そこから全ての経費が賄われるからです。この割合は、約90%から97%となります(中小企業全業種平均で黒字企業の場合)。よって、売上はどんどん増えているけど、最終利益は赤字の中小企業はとても多く存在しています。売上は増加しているのに最終利益が赤字という中小企業が多いのは、粗利益が低いことが原因です。
粗利益を高めるには、高度な戦略が必要です。従来の売上主義的な考え方では、価格を安くして販売数を増やすことが重視されましたが、これでは競合との消耗戦に陥り、中小企業は疲弊してしまいます。
そこで重要になるのが、販売数を減らしても価格を上げていく戦略です。この戦略の有効性を検証するには、戦略MQ会計を活用し、自社でシミュレーションを行うことをおすすめします。これにより、売上や収益目標を設定する際にも、根拠のある数値目標を立てることができます。
経営者は、あらゆる要素を数値化し、客観的な分析に基づいた意思決定を行う必要があります。過去の売上至上主義から脱却し、1位主義の経営へと転換しなければ持続可能な経営は実現不可能となります。