戦略日記

成功への幻想 #197

成功への幻想 #197

巷では、経営者の成功体験セミナーや成功事例を紹介する記事や本が溢れ返っています。これらを熱心に学ぶマニアのような人がたくさんいます。これには非常に注意が必要です。

会社を起こし、経営者の肩書きがつけば誰しも成功したいと思うのは当然だと思います。周りの経営者が成功すれば羨ましいと思い、ついつい成功事例ばかりに目がいってしまいます。「こうすれば成功する」という表面的なノウハウや安易な方法論に飛びつきたくなる気持ちは、人の性と言えるかも知れません。

たとえ成功の秘訣がわかったとして、必死に自社で真似をしようと試みてもほとんどが成功しません。何故なら、戦略や競合との力関係、組織や資金などの力と時流が違うからです。大切な経営環境の完全コピーなど全くもって不可能なのです。成功の戦略メカニズム、経営システムが成立する前提が自社に当てはまる訳がないのです。

このように表面的な成功事例を追いかけて真似るだけだと十中八九失敗することは目に見えています。何故なら、目に見えない要因の戦略が最も経営に影響を与えるからです。

これらの戦略は、一朝一夕で出来上がったものではないので真似ようとしても簡単にはいきません。仮に真似が出来たとしても、自社の経営の仕組みや組織に馴染まず頓挫してしまう確率の方がはるかに高くなります。

成功した経営者の話が絶対の正解ではありません。たまたま成功した事柄を後付けとして、経営者自身の人間性などを強調されている場合もあります。この場合の真似は更に困難を極めます。再現性がないからです。成功したことを「もう一度できるか。繰り返し誰もができるか」が重要な鍵となります。

「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」の格言の通り、負ける時は、何の理由もなく負けるわけでなく、試合の中で必ず負ける要素があります。試合に勝つためには、負ける要素が何だったかを抽出し、どうしたらこの要素を消せるのかを考える必要があります。

負ける場合、戦い方や思考法、行動プロセス、あるいは組織で一定の癖があったりします。自社で上手くいかなかった失敗を冷静に分析し、何故、負けたのかという本質を問うことが重要です。

世の中の成功事例を学ぶことは不毛な時間と言っても過言ではありません。やってはいけないことの一つであり、むしろ失敗から多くのことを学ぶことができます。