戦略日記

即行動の落とし穴 #196

即行動の落とし穴 #196

経営者の勉強会では、必ずと言っていいほど「今日学んだことを、一つでも良いから持ち帰り、即行動しよう!」という熱気あふれる声が飛び交います。私も以前は、その熱気に感化され、行動することの大切さを信じていました。

行動すること自体は悪いことではありませんが、何のために、どのように、何を重視して行動するのか、という戦略を立てることが重要です。

戦略がないまま、ただ「行動」に重きを置く経営者は、多くの場合、戦術に振り回されています。戦術とは、「目に見える具体的な行動」のことです。一時的な効果は期待できますが、持続的な成長にはつながりません。なぜなら、戦術は効率性を高めるための手段であり、効率性には限界があるからです。

戦術ばかりに気を取られている経営者は、その限界に気づかず、次から次へと新しい戦術を求めて彷徨い続けてしまいます。まるで砂漠をさまよう旅人のように、目的地を見失い、同じ過ちを繰り返すのです。

戦略は「目に見えない知恵の世界」です。短期的な成果が出にくいことから、つい見過ごされがちです。地味で目立たない。つまらなく感じる。目先に忙殺されて基本を忘れる。何か新しいことをやらないと仕事を行った気になれない。こんなことを地道にやるより、即行動なので「ごちゃごちゃ言わずに、とりあえずやってみよう!」と「勘や度胸で乗り切れる」と戦術経営者は思ってしまいます。

戦略なき企業は、同質化競争に陥れば、利益は限りなくゼロに近づいていき、ゆっくりと死に向かっていきます。相反する異質化は、リスクが多く失敗する可能性があります。どちらも失敗するという矛盾の中で、失敗確率をどうやって下げていくのか。それは、先ずは戦略の考えを知り、これをやったら失敗すること自体を学ぶことに尽きます。

最近、私は「失敗してみると良い」とアドバイスすることが増えました。この本質に気づいてくれれば良いのですが、人が本当に気づき、変われるのは究極のゴールを迎えなければいけないのかも知れません。それは倒産という最悪の結末。気づいた時は、遅しですが… こうならないよう戦略を知り経営実力を高めていきましょう。