戦略日記

任せることの履き違え #184

任せることの履き違え #184

「うちの会社は社員の自主性を尊重して任せている。」と自慢気に語る社長がいる。まるで自分が器の大きい社長だと言わんばかりである。任せるという言葉は耳障りが良い。これを聞いた人たちからは「素晴らしい会社だ。」と称賛されることが多いので気分が良くなる。

任せるとは、どういう意味なのかわからないままに頻繁に使うので会社の業績は一向によくならない。企業は社長による戦略の意思決定で運命が決まる。そして会社の未来も、この決定にかかっている。

勘や経験、度胸の経営で場当たり的な戦術(対処療法)を繰り返していたのでは、経営が良くなることはありえない。任せることの定義がなければ、放任となってしまう。放任どころか、社長の仕事を放棄していることにもなる。

当然、戦略という重大な意思決定においては、決断の材料となる情報やその情報の信憑性が必要になってくるので、「正しい決定」をするためには、その決定を後押しする根拠が必要不可欠となる。根拠を持つには、戦略の正しい知識を持つこと以外にない。

戦略が決定されてこそ、戦術に移されることになる。戦略決定は、最高責任者である社長の最大の仕事となる。これを実施していくのが社員の仕事となる。

よって決定は社長で実施は社員の役割となり、任せるのは実施の部分であって決定ではないことを肝に銘じなければいけない。