戦略日記

毒にも薬にもならない経営理念 #171

毒にも薬にもならない経営理念 #171

経営理念が企業の目標や方針を支える重要な要素として機能する必要があるにもかかわらず、曖昧で具体性がないものがよく見られます。その経営理念が企業にとってプラスでもマイナスでもなく、単に存在するだけで特別な影響を与えていない状態です。

経営者の話を伺っていると「経営理念が社員に浸透していない。」「社内で共有が難しい。」などを良く聞きます。それはなぜかと考えてみると「抽象的すぎて具体的ではない。」ことが挙げられます。

例えば、「社会に貢献する」という理念は、あまりにも抽象的で具体的な行動に落とし込むことが難しいです。他にも、「顧客満足度向上」という理念は、多くの企業が掲げており、ありきたりであり、独創性に欠け自社ならではの特徴が全くありません。「日本一の企業になる」という理念は、実現可能性が低く社員のモチベーションを下げる可能性があります。

これらの理念は、一見すると立派に見えますが、具体性に欠け、抽象的なので社員が実感を持てず、理解されにくいため経営理念はただの飾り物になってしまいます。言わば「毒にも薬にもならない」ということです。解像度が低く、わかりにくいので掛け声だけの単なるスローガンで終わってしまいます。働いている社員は「そうそう。私は、このために働いているんだ。もっと頑張ろう。」という気持ちになりにくいのではないでしょうか。

例えばユニクロは「Life Wear」というブランドのタグラインから「ふだん着の日が、人生になる。」というブランドメッセージに落とし込みました。とても具体的であり、お客や社員へ解像度の高いメッセージとして伝わります。

更にメッセージは、外部(市場)へのメッセージと内部(社内)へのメッセージの二つに分けて考えることが大切です。これを混同してしまうと解像度を高くすることは難しくなります。解像度を高くするとは、鮮明にするということです。

どこの誰からファンになってもらいたいのかの戦略を鮮明にすることによって解像度が高く、「響き、伝わるメッセージ」となるのです。自社の経営理念は、誰に向けてのメッセージになっているのかを点検、見直しをしてみましょう。