戦略日記
社長の会話から見える戦略なき経営 #170
経営者同士の会話に耳を傾けていると、戦略を欠いた経営が実に多いことに気付きます。真っ先に商品やサービスの表面的な機能や性能を付け加えたり、変更したり、SNSを活用すれば売上が向上するのではないかという議論が盛んに行われています。
これらの議論は、戦略を理解していないために、戦術だけが表面化している現象です。戦略は知恵の勝負であり、色や形がないため目に見えません。一方、戦術は具体的な形として表れるため、顧客や競合からも見られることになります。
戦略と戦術の区別ができていない社長は、「バタバタしている」を口癖のように言いながら、自身の経営能力の3倍、5倍も広い地域や客層を対象に慌ただしく動き回ります。
周囲から見れば、忙しく仕事熱心で立派な社長と映るかもしれませんが、「戦略なき経営は無駄が多い。」と言われる通り、業績などの成果は伴わず、社長も従業員も疲弊していきます。戦略のない社長についていく従業員の不満は募り、一人当たりの粗利益額が上がらないため、給料アップも見込めません。社長からは理念や「○○を幸せにする。」といった精神的な話ばかり聞かされることもあります。
デフレ経済からインフレ経済への変化にもかかわらず、過去の成功体験に囚われた社長は、「もっと頑張れ!」「努力が足りない!」と繰り返すばかりです。しかし、現在は誰もが長時間労働をすれば儲かった時代ではありません。
松任谷由実さんの名曲「やさしさに包まれたなら」の歌詞にある「目に映る全てのことはメッセージ」という言葉を、戦略的に考えると、顧客に見えるものは戦略から導かれたものでないと意味がないという解釈になります。
いくら表面上の商品やサービスを議論しても、永続的な売上向上には繋げることができません。議論の中心は、どこの誰に、どのように貢献するのかを意図的かつ明確にする必要があります。