戦略日記

付加価値の勘違い #157

付加価値の勘違い #157

経営者の勉強会でよく聞く言葉に「付加価値」があります。「今後、活路を見出すためにどのような展開を考えていますか?」と聞かれると、経営者は画一的に「これからは付加価値を高めなければならない。」と答える光景を目にします。

付加価値は、差別化を測る際に用いられやすい言葉で付加価値が高いということは、商品やサービスに魅力があることを示唆しています。

一般的には、商品やサービスに特別な価値を付与することを指します。多くの競合がひしめく中で、商品やサービスを「なぜこれを購入したのか。」という決め手が付加価値ともいえるでしょう。他よりもコスパがよい、デザインが格好いい、使いやすいなどの付加価値を吟味して、消費者は商品やサービスを選びます。付加価値をつけることで他のサービスや製品と差別化を図ることができる戦略と言えます。

経営における付加価値とは、会社がどれだけの価値を生み出せたかを測る指標といえます。経理(会計)担当の方には馴染みがある指標かもしれません。財務分析で生産性を測る際には、数値化された付加価値が利用されます。

付加価値=売上高-外部購入価格(外注費や売上原価)で表されるので、「粗利」と捉えるとわかりやすいと思います。経営の経済的資源が粗利であるので、粗利が高いか低いかを指標として常時掴んでおくことが重要です。

付加価値を高めるとは、粗利を高めるということです。

ところが大きな勘違いをしてしまっている経営者は少なくありません。付加価値と称し、既存の事業や商品サービスに何かを加える、足すことが付加価値と思い込んでしまっています。

総じて経営資源の少ない中小企業が付加価値の勘違いで、あれこれ足すことによって益々、手数が増えて経費が上がっていくことを分かっていないのです。戦略がない状態で商品やサービスの差別化をはかろうと、あれこれ足したところで売れるものではありません。

簡潔にいえば、より少ない労力でどれだけの粗利(付加価値)を稼ぎ出すかに尽きます。つまりは販売数は減ったとしても単価を上げて粗利益を高めていく戦略が必要不可欠となります。

「何かを増やそう。何かを足そう。」と考えることが「付加価値を高める。」という勘違いに気づかなければ、経営は疲弊し存続すら危うくなります。利益構造(MQ会計)の根拠を知ることで、自社がどのような戦略で打ち手を行っていけば良いのかが分かります。