戦略日記

トップダウンとボトムアップ #155

トップダウンとボトムアップ #155

中小企業経営者の間で「トップダウンとボトムアップのどちらが良いのか。」を議論されることがしばしばあります。「あの会社はトップダウンだ」とか「これからの時代はボトムアップが重要だ」といったような内容です。

トップダウンとボトムアップは、どちらも企業などの組織を良くしていくため、将来どのような方針を採っていくかを決定していく方法のことです。ただし、方針決定のあり方としては、お互いに反対の概念であり、対照的な言葉といえます。

トップダウンとは、日本語でいえば「上意下達」という意味です。企業の経営上層部が意思決定を下し、それに基づいて下部組織が動くという意思決定スタイルを指します。上層部が決定したことが、そのまま組織に伝えられるので意思決定から行動までのスピードが早いという特徴が挙げられます。

ボトムアップとは、日本語でいえば「下意上達」という意味です。企業の下層部の組織メンバーの意見や提案を上層部が吸い上げることで意思決定をするスタイルを指します。現場で実際に動くメンバーの現状や意見を反映できるので、現場に寄り添った意思決定ができるという特徴が挙げられます。

それぞれのメリットやデメリットは存在しています。トップダウンとボトムアップの是非や賛否を問うことは不毛の議論と言えます。何故なら、そもそも経営者は企業が市場において競争優位性を保つ経営方針を全社に行き渡らせる責任があるからです。

経営方針はズバリ、経営戦略のことを指します。経営戦略は企業経営において必須事項であるので、企業経営者が先ずは戦略(方針)をトップダウンで明示しなくては、大切な社員メンバーを乗せた船をたどり着く港がない航海をすることと同じになってしまいます。

ランチェスター法則では、戦略と戦術の比率は2:1と定義されています。戦略は経営者が考え抜いて決める最重要課題です。この戦略、すなわち経営方針の設定次第で業績など会社の命運を大きく左右させます。経営における社長の戦略構築のウェイトは86%に及びます。

つまり、戦略はトップダウンで戦術はボトムアップと言い換えることが出来ます。戦略をトップダウンで行い、様々な打ち手を重ねていく戦術はボトムアップで良いのです。戦術のアイディアは無数にあって良いからです。

戦略と戦術の根本的な違いを知らない経営者は、企業の目的を属人的な要素と混同させてしまい、「トップダウンは、それリーダーシップが必要だ。」「カリスマ性が大事だ。」と組織を混乱させ、間違った方向へ進めてしまう危険性をはらんでしまうことを深く認識する必要があります。