戦略日記

戦略は見えざるもの #146

戦略は見えざるもの #146

「戦略は見えざるもの。戦術は見えるもの」と言われています。これは、太平洋戦争時、帝国海軍の連合艦隊指令官長官であった山本五十六が残した言葉であると言われています。

「孫子の兵法」では「算多きは勝ち、算少なきは勝たず。」という教えがあります。算とは、計算や思索を表しており、敵より多く考えて準備したものが勝ち、考えや準備が足りなかった者は負けるという意味です。勝負は時の運なのでやってみなければ分からないというのは愚者の行動となります。

経営に置き換えると敵とはまさしくライバル会社、競合のことです。

戦略は、単に目標を達成するための手段や方法ではなく、その目標を達成するために必要な企業の強みや弱み、競合の状況、市場環境など、さまざまな要素を総合的に考慮して、長期的な視点から策定されるものとなります。

例えば、ある企業が「市場シェア1位を目指す」という目標を掲げたとします。この場合、単に「広告をたくさん打つ」など戦術を立てても、必ずしも目標を達成できるわけではありません。なぜなら、市場シェア1位を達成するためには、競合他社との力関係の分析を行い、顧客に選ばれる商品やサービスを提供していく必要があるからです。そのため、企業は自社の強みや弱み、競合状況、市場環境などを分析し、それらを踏まえた戦略を策定する必要があります。

戦略が見えないものであるということは、その重要性を示す言葉であると言えます。戦略は、企業の将来を左右するものであり、一度策定したら終わりというものではありません。常に環境の変化に対応しながら、戦略を修正していく必要があります。そのため、企業は、戦略を策定する際には、慎重かつ入念な検討を行うことが重要です。

戦略に責任を持つのは当然、経営者でしかありません。「見えないものを見ること。」これを形にして社内に明示できるようにしなければ経営者は務まらないというわけです。よく現場が好きな社長がいますが、現場に張り付き傾注してしまうあまり戦略の視点を忘れてしまえば、経営者失格となります。もちろん現場の状況を理解することは大変重要ですが、これだけにかまけてしまってはいけません。

経営者の大きな役割は、会社の大きな方向性を打ち立てることであり、さらに戦略目標を作ることに尽きます。戦略的思考とは、見えないものを見る思考のことです。今、目の前で起こっていることは結果です。この結果には、1時間前に何か原因があったかも知れない。更に深堀りすれば、1ヶ月前にこの原因があったかも知れない。このように見えないものを見るとは、長期的且つ全体を俯瞰する視点が常に求められます。

戦略を考えるには、相当な時間や労力が必要となります。経営の全体像と同じで、もともとわかりにくいものなので、ついつい見えるものである戦術に走ってしまっている経営者が多くいます。いつまで経っても場当たり的、一過性の経営から脱却できなくなってしまいます。