戦略日記
歴史的勝利の戦術 #108
サッカー日本代表がワールドカップ2022の初戦で優勝候補のドイツに逆転勝ちして歴史的勝利を収めました。
日本代表ユニフォームの胸には「三本足の八咫烏(ヤタガラス)」のエンブレムがついています。
八咫烏は、大和神話に出てくる三本足のカラスで明治時代、日本に初めて近代サッカーを紹介した中村覚之助氏が、熊野那智大社がある和歌山県那智勝浦町出身だったことで、日本サッカー協会は、日本代表チームのシンホルマークとして勝利に導く、ボールをゴールに導く神様として八咫烏を昭和6年に採用したそうです。
テレビで手に汗握る、迫力ある試合をランチェスター戦略の眼で観ながら応援していました。
サッカーの専門的知識は詳しくありませんが、基本的に敵がいない空白地帯(スペース)をいかに上手く使い、ボールをコントロールすることに尽きると思います。
ランチェスター戦略でいう、「競合と争わない」というスペースを支配することになります。前半終了時点でボールの支配率はドイツが72%に対して日本は17%
この劣勢の局面を打開するために、後半から日本代表は陣形(フォーメーション)のシステムを変えて、攻撃型の選手を次々に投入しました。戦術面での大々的なキャンペーンです。
ドイツから見ると日本の陣形が変わり、前のめりに攻撃を仕掛けてくるので守備的になるのは必然であり、マークする選手が次々に変わるので混乱しているように映りました。
これは弱者のかく乱戦法と同じです。
状況と局面において陣形を変える、状況変化対応力は経営においても大変重要であり、これを実行した森保監督の勇気は素晴らしいと思います。人や企業は「変わらなきゃいけない。」と思っていても、どこか心の奥では「変わらなくても、このままでいい。」と思っているからです。
試合の実況や解説者の話の中でも「戦術、戦式を変えた。」と盛んに言っていました。この通り、白熱した試合の指揮をする監督は戦術であり、戦略の根本であるベスト8以上を目指すという事は変わらないのです。
もう一つ、特筆すべき精神的側面があります。試合開始直前の選手たちの表情です。戦いでいうと突撃命令が出される直前であり、精神状態は極限となっていたはずです。
勝利後の選手たちのインタビューコメントにも感動しました。興奮している状態でしたが「勝つことを前提として4年半取り組んできた。」 「一喜一憂せずに次の試合に向けて準備する。」などなど。
相当に目的が明確になっていて選手全体で共有されていると感じます。
勝って兜の緒を締めよ。
戦いに勝ったからといって油断してはいけない。 いつ再び敵が現れないとも限らないので兜の緒もきちんと締めておけ。成功したからといって気を許してはなりません。
ランチェスター戦略の思考でワールドカップ観戦が益々、熱く楽しくなりそうです。