戦略日記

出血状態で病院へ行かない #219

出血状態で病院へ行かない #219

最近、経営の相談を受ける時に必ず最初にお聞きすることがあります。それは、従業員一人当たりの粗利益額です。売上の推移ではありません。

この一人当たりの粗利益額を業種平均と比較します。これで最初に黒字か赤字かがわかります。業種平均を上回っているなら黒字、下回っているなら赤字です。

赤字の場合、「なぜ赤字になってしまったか」の原因をお聞きすると社長自身が的を得ておらず、よくわかっていない回答をされるケースが多々あります。これは、現状を把握できていない証拠です。

中小企業における赤字の割合は約80%です。つまり、ほとんどの企業が出血状態にあるという厳しい現実があります。出血を放置すれば、いずれ命を落とすように、赤字を放置すれば、企業は倒産へと追い込まれてしまいます。当然ですが、先ずは止血をすることから始めなくてはいけません。

では、なぜ多くの企業が、日夜努力を重ねているにもかかわらず、赤字という出血に苦しんでいるのでしょうか。それは、まるで羅針盤を持たずに航海に出るようなもので、「戦略の欠如」が大きな原因です。

戦略の欠如として、多くの経営者が陥る罠は、「価格を下げて売上を増やす」という安易な発想です。しかし、それは一時的な効果しかなく、利益を圧迫し、さらなる出血を招く危険な賭けとなります。

競合他社より価格を安くし、そして販売数を増やして「売上につながることは何でもやる!」と売上拡大、規模拡大を考えている経営です。「いつの時代の話なのか」と耳を疑いたくなることを自慢げにいう経営者は、未だ多数見受けられます。
 
市場全体の拡大成長が望めない環境の中で、ヒト・モノ・カネ・情報・時間などの経営リソースが限られている中小企業が生き残るには、顧客ニーズを絞った差別化集中戦略しかないからです。戦略とは何をしないかを決めることであり、取れるリスクと取れないリスクを見極めることです。


戦略とは、目標を達成するための道筋、いわば「何をするのか」を決める社長の最大の仕事です。
* どこの地域で顧客は誰なのか?
* どのような価値を提供するのか?
* 競合との差別化ポイントは何か?
* どのように顧客にアプローチするのか?
* どのように顧客を維持していくのか?
* これらを形にするために、どのような組織編成にするのか?
* どのくらい予算投入を行うのか?
* どのように時間配分を行うのか?


これらの問いに対する明確な答えを持つことが、戦略策定の第一歩となります。戦略なき企業は、赤字度合いが高くなり益々、出血が酷くなっていきます。出血が酷いのに医者へも行かず、放っておく人はいないと思います。しかし、現実を直視しない経営者は少なくありません。

経営者は、出血している大本の原因を知らなければなりません。「臭いものには蓋をする」のではなく「臭いものは、元から絶たなければダメ」なのです。