戦略日記
戦略を知らないは許されない #217
小規模企業を中心に倒産件数が過去最高となっているとのことです。物価高や人手不足、後継者難に新型コロナ支援策の終了やゼロゼロ融資の返済負担が加わったのが主な要因です。更に、2025年は「新陳代謝」と「優勝劣敗」が加速する一年になりそうです。
インフレ経済に完全にシフトしている中、ビジネスモデルが古くなっているにも関わらず、経営者が旧態依然とした考え方で事業展開していることも考えられます。
このような厳しく混沌としている環境下で、中小企業経営者の多くは「何かを変えなければいけない」と口々に危機感を持っています。しかしながら、先々についての展望を伺うと、過去の延長のような答えが返ってくることが多いのが現状です。
危険が迫っているにも関わらず、状況の変化が緩やかな場合、なかなか危機的状況に気付けないことがあります。気づいたときには取り返しのつかない状態になっていた、という事態を経験したことのある人も多いのではないでしょうか。
こうした状況を表す言葉として「ゆでガエルの法則」というものがあります。「ゆでガエル現象」「ゆでガエル理論」「ゆでガエル症候群」とも呼ばれます。
カエルを冷たい水の中に入れて少しずつ水温を上げていくと、温度変化に気づかず、最後にカエルは茹で上がって死んでしまうという話が由来です。実際には、熱湯にカエルを入れると逃げることなくすぐに死んでしまい、冷たい水から水温を上げていくとむしろ途中で逃げ出すとも言われているようです。
ゆでガエルの科学的な根拠がいずれであったとしても、変化が緩やかな状況において、危機的状況に素早く気付き対応することの難しさや重要性を、ゆでガエルの法則は表現しています。
自社の成長を考える前に、経済の流れや社会情勢、市場の動向、ライバル・競合会社の分析など、取り巻く状況を正しく掴むことが重要です。現状や将来の経営環境について著名な学者の講演を聞いて、危機感を強く持ったとしても具体的な打ち手が必要となります。
「緊迫した経営環境であることは理解できたが、具体的に何をして良いのかわからない」という中小企業経営者の声を多く聞きます。これは、経営者が戦略を知らないが故に起こる現象です。
このような経営者の打ち手の大半は、目に見える戦術ばかりです。「理念やビジョンが大事」と高らかに唱えた後、戦略がなく戦術に直行してしまうケースです。戦術だけでは、生産性を高めようとしても一向に上がりません。
経営者が「戦略を知らない」では許されないのです。ゆでガエルの如く、「時すでに遅し」にならないようにしなければいけません。