戦略日記
戦略に無関心な社長 #166
孫子の兵法の中に「百戦百勝は善の善きものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善きものなり。」という教えがあります。百回戦って、百回勝っても、百回も戦ってしまえば資源や組織、自分自身もボロボロになってしまいます。下手をすれば漁夫の利をさらわれてしまうかもしれない。それでは、勝ったところで何もならず最善の策とは言えないでしょう。
最善の策とは、戦わずして敵を屈服させることです。戦わずして相手を屈服させ、相手の資源を取り込んでしまえば良いのです。現代の経営においても然り、競合ライバル会社との力関係を分析せずに競争に明け暮れ、疲弊している企業は後を絶ちません。
孫子の兵法は、敵と味方の兵力を冷静に見極め、勝てる時にのみ戦うという考えが示されています。それどころか、戦わずして勝つ方法を考えることが重要です。
軍事学の教典と言われている兵法書にも関わらず、本編の中には、人の勇気を鼓舞するような言葉は出てきません。「不敗」即ち、負けないことを最重要と考えていたため、100%勝てるときだけ戦い、そうでないときは逃げることを説いています。不利な状況でガムシャラな勇気は敵の思うつぼになり、経営においても「やめる」決意が必要となります。つまり、業績が一向に上がらず苦戦を強いられている企業は、戦いをやめる勇気が持てずに負けるべくして負けてしまうのです。
「優れた定石(勝つ方法)を持つ。」ということにも言及しています。物事には「定石」というものがあります。良い定石を知り、習得した経営者は、自社の事業活動においても勝ちやすくなります。頭脳が優秀な人でも定石を知らなければ、定石を知る凡人に負けてしまいます。自由気ままで感性や勘に依存している人はとかく学ぶことを疎かにしたり、間違った学びであっても気づかずに「負ける経営」をしています。
経営は、「やり方」の上手下手ではなく、あることの決定によって会社の運命が決まります。その決定を行う人こそが社長であり、社長がこの決定を誤れば当然、会社は存続不可能となります。
やり方は「戦術」であり、決定は「戦略」に該当します。この戦略は経営において8割以上の重要度があり、戦略の設定によって業績は決まります。戦略に間違いがあれば、どのような高いレベルの戦術を駆使しても、それを活かすことができません。
戦略は文字通り、戦いを略すことです。「これをしたら負ける。やってはいけないことを知る。」ことから始まります。巷では、いつの時代においても他者の成功体験を追いかける経営者は少なくありません。しかし、他者の成功体験をそのまま再現することは不可能であることも知っておく必要があります。
このように社長は戦略を知るべきであり、知らないと会社がとんでもない事態に陥ってしまうことを知らないといけないのです。