戦略日記
未体験ゾーンに突入している #115
日本の賃金は過去30年間上がらず横ばいで推移してきました。企業物価指数は上昇を続け、円安が加速しインフレ経済に突入しています。これは40年ぶりとなる状況です。
30年、40年と言うと経営者の中でも誰もが体験したことのない局面となっていると言えます。
物価の高騰が続く中、ニュースなどで経営者のインタビューを見ていると「仕入れが上がっており、大変厳しい状況であるが企業努力で価格を何とか維持してきたい。」と苦悩の声が大半です。企業努力の視点が違うように感じます。
売価は変わらず、原価が高騰すれば粗利益は減少します。減少すれば数量を多くする手立てしかありません。これでも利益を出せる根拠はありません。売上主義の典型的パターンです。
物は安く、大量に売るというこれまでの概念が凝り固まっているように感じます。正に経営者の誰もが未体験ゾーンに突入して、経営において何をして良いかがわからない状況に陥っていると言えます。
ゆでガエル理論というものがあります。
「カエルはいきなり熱湯に入れると驚いて逃げ出すが、常温の水に入れて水温を少しずつ上げていくと逃げ出すタイミングを失い死んでしまう。」というつくり話が由来となっています。
これは科学的には誤りのようですが、経営環境の変化に対応することの重要性や困難性を指摘するために用いられている教訓です。ゆでガエルの法則ともいわれています。
●会社の業績状態が悪いにも関わらず、過去の栄光にすがり、考え方が変わらず抜本的な改革を行わない経営を続ける。
●社会情勢が日々変化しているのにも関わらず、危機感を感じないままこれまでのやり方を押し通してしまう。
経営は変化対応業です。変化しなくてはいけないと思っていても、実は変わりたくないという性質を持っているのが人間です。
人は、変化に気づきにくく、気づいていても安易な考えをしてしまい、対策を打つのを後手後手にしてしまい、気づかないまま死んでしまうゆでガエルと同じ状態になってしまいます。
例えば、業績低下が起こると、希求水準自体がそれに慣れてしまい、改革へのきっかけがつかめなくなるというわけです。
企業規模の大小に関わらず、経営者が戦略なき経営で「うちには関係ない。」とばかりに、旧態依然の考え方とやり方では、行く末は見えており時間の問題となってしまいます。
局面は、悠長なことを言えない状況であり、過去の体験や経験に頼る経営ではなく、高度な戦略経営を行っていくことが急務且つ必須となります。