戦略日記

付加価値という幻想 #93

付加価値という幻想 #93

「あれもやろう。」「これもやろう。」「ついでにこれもやろう。」と次々に商品やサービスを拡げていく足し算経営は、自信の無さの表れと言えます。

自信のない経営者は足し算を好みます。

増やしていけば、誰かにヒットするだろう。多ければ、とりあえず安心という発想だからです。

とりあえず増やしたところで、一つに集中している企業にはかないません。ましてや「誰かにヒットするだろう。」という曖昧な客層設定では、いつまで経ってもお客の心には響きません。

需要が多様化している時代で、目先の売上にとらわれて全ての顧客の声に迎合していくとどうなるでしょうか。

色々なお客の声に応えようと、次々に足し算が進み、商品が増殖していきます。

品揃えに特徴がなくなり、在庫も膨らんでいくでしょう。倉庫など物理的スペースが足りなくなり固定費は膨らんでいきます。

全ての人々に好かれる企業は存在しません。

機能が多ければ高く売れる。機能を増やせば差別化ができる。本当でしょうか?

時代は変わり完全に成熟した今、顧客は機能が多い商品を好むという考えは幻想です。

シンプルが高品質でありスタイリッシュとなり高級イメージにつながるのです。

経営者が口癖のように「付加価値を高める経営を…」と言います。

ある人は「付加価値とは、今ある物に対して何らかの価値を付け加えること。」と答えました。

これは現在の製品に何かをプラスする足し算方式と言えます。

未だに多くの企業が何か新しい価値を生み出そうと付加することばかりを考えていることが多いと思います。

本来の付加価値の意味は、生産段階で新たに付け加えた価値であって、何かを加えることで価値が生まれることではありません。

市場が成熟した時代に、足せば価値は増えるという思い込みは要注意です。

引くことによって、価値を生み出す時代であり「足す価値」から「引く価値」へシフトすることが起点となり、際立った強さとなっていくのです。